対馬で釣り上げた高級魚!おじさんがおじさんを釣った
「対馬で釣り上げた高級魚!おじさんがおじさんを釣った」
対馬に移住してからの新生活で私は釣りを覚えました。
*対馬で知り合った友人の導きがはじまりです。
最近では、
(夕飯の刺身に魚を釣ってくるわ)
と手慣れたものです。
*嘘です。まだまだ初心者の手習いレベルです。
そんなある日の休日、
(今夜は鍋の用意をしておいて)
家族に大きなことを言う私がいました。
車で10分程度のいつもの釣り場に行くと、
(うわぁ、風が強い)
防波堤のおかげで少しは風が和らいでいますが、
防波堤の向こうは暴風です。
(鍋の用意をしている家族の期待を裏切ってはならない)
そんな強い思いを抱えている私が、
この程度でひるむはずがありません。
さっそく、釣りの準備を始めました。
昼からスタートして、
すでに4時を迎えようとしています。
*この時点でカサゴさんが2匹でした。
隣でファミリーが釣りをしています。
そこで歓喜の声が、
(これは凄い。自己最高の大物を釣ったぞ)
お父さんは息子さんに誇らしげに語っています。
私は内心、
(今に見ていろ!私だって)
家族に対する想いは私も負けません。
少ししてから、
(こんちにちは)
大物を釣り上げたお父さんから声をかけられました。
ここは紳士を装って、
(こんにちは)
と返事をすると、
(釣れてんじゃん)
男の子が私の釣った魚を見て吐き捨てました。
(俺だって・・・もうすぐ大物を釣ってやる)
と涙をこらえました。
それからしばらくして、
ファミリーもホクホクした顔で釣り場を後にしました。
(釣れない・・・なんで)
やはり、釣り歴1ヶ月の私の実力はこんなものなのでしょうか。
ビギナーズラックすら訪れる気配がありません。
(絶対にスペシャルな鍋を飾る大物を釣り上げる)
私はその釣り場に対するこだわりをあっさりと捨てて、
次のスポットに向かいました。
(ここもやっぱり無理か・・・)
もう、半ば投げやりです。
仕掛けも引っかかって最後の一つになりました。
(知らねぇ。鍋なんか別に好きじゃないし。魚がなければ鶏肉にすれば良いじゃんか)
もう半グレ状態で友人と釣りに行っていたら、
とっくに絶縁されそうな勢いでした。
(餌も無くなったし・・・最後の一投)
もう遠くへ投げる気もしません。
ごみを投げ捨てるように足元にポチャンです。
何だかズシッと思い手応えがありました。
(どうせゴミか何か引っかかったんだろう)
完全にヤサグレ状態です。
そんな私でしたが、
対馬の海の神様は私を見捨ててはいませんでした。
(おーい!連れてるやないかい)
高い堤防から網も用意せずに釣りをしているため、
必死にリールを巻きあげました。
すると・・・これが釣れていました。
釣り上げた時の最初の感想は、
(なんで海に鯉がいるんだよ?)
予想外の展開に頭が混乱しました。
そして気を取り直して、
(魚博士の奥様に聞けば良い)
我が家の奥様は魚博士と呼ばれるほどの博識を持った方で、
お父さんは釣り船を趣味で転がして家族から非難を浴びているほどの人物です。
*お父さん、見ていたらごめんなさい。
そんな奥様に喜び勇んで魚を見せると、
(へんな魚。髭が生えてるし・・・気持ち悪い)
魚博士の奥様の表情が曇ります。
(まぁ、知らない魚だけど・・・ネットで調べてあげる)
私は甲子園出場が決定した後に後輩部員が不祥事を起こして、
出場が取り消しになった先輩部員のように肩を落としていました。
すると魚博士の奥様が弾んだ声で言います。
(これって高級魚らしいよ♪)
さきほどのあの下げずんだ目が嘘のように光り輝いています。
奥様のスマホを取り上げると、
(おじさん)
訳のわからない名前が書かれています。
確かに高級魚らしいですが・・・髭がはえています。
(おじさんがおじさんを釣った)
と思わずつぶやきましたが・・・奥様は浮かれてスルーです。
(刺身そして鍋が最高におすすめなんだって♪)
サイズを図ると・・・30センチオーバーのビックサイズです。
*釣り歴1ヶ月の私には大物です。
見た目は少々気持ちが悪いし、「名前はおじさん」という魚。
その姿とは裏腹に、
(なにこれ!!!超美味)
美味しんぼの山岡さんも驚愕する甘さが口に広がります。
さらに・・・ポン酢と紅葉おろしが抜群におじさんを引き立てます。
(対馬最高!おじさん最高!今日も最高)
この夜も家族で対馬の海の幸に舌鼓しながら大盛り上がりしました。
(あんたも対馬に一回来んね)
私の対馬での新生活は最高な毎日です。
対馬は本当に素晴らしいところです。